スマートフォンを使った地震時の計測

スマートフォンには、Geo-Stickに搭載されているものと同様のMEMS加速度センサーが装備されています。これが計測しているデータをアプリで取りだせば、スマートフォンを振動計として動作させることができ、地震時の振動を捉えて震度などを表示させることもできます。また、スマートフォンは多くの人が保有しており、地震が発生した場合に様々な場所で振動を捉えることができ、これらのデータを集めることができれば、地震で揺れやすい場所を調べたり、地震動の伝わる様子を可視化することができる可能性を秘めています。米カリフォルニア大などの研究チームが開発したMyShakeと呼ばれるアプリでは、震源に近い場所でスマートフォンが捉えた地震動が、どのくらいで自分の場所に伝わってくるかをユーザーにしらせ、注意を喚起することを目標としています。

https://play.google.com/store/apps/details?id=kr.sira.vibration&hl=ja

https://play.google.com/store/apps/details?id=edu.berkeley.bsl.myshake&hl=ja

http://www.hakusan.co.jp/LABO/i-jishin/

https://qt.weathernews.jp/

Geo-Stickでは、地震時の揺れに基づく構造物の診断を目的としているため、同じ場所に長期間しっかり固定されていることを前提としています。これにより、構造物の大地震時の揺れや経年変化、地震時の損傷などを推定することができます。もちろん、多くの構造物にGeo-Stickが設置されれば、スマートフォンを用いたものと同様なサービスも可能となります。

サンプリング周波数

Geo-Stickで用いているMEMS加速計測モジュールは、1Hzから200Hzでのデータサンプリングが可能で、Geo-Stickでは100Hzでのサンプリングを標準としています。

一般的に、構造物での地震時の振動計測では20Hz程度までの周波数の振動を対象としています。周期でいうと0.05秒です。剛性の高い鉄筋コンクリート造のビルでは、その固有周期はビルの高さ×0.02秒ほどといわれています。固有周期とは、その構造物が揺れやすい(揺れが増幅されやすい)振動の周期のことです。極端な例として、高さ3mの鉄筋コンクリート造のビルを考えると、0.06秒が固有周期となります。構造物の振動計測では、この揺れを捉えることができることが目安となります。

http://www.taisin-net.com/solution/online_seminer/mensin/b0da0e000000conh.html

http://www.obayashi.co.jp/service_and_technology/pickup008

20Hzのサンプリング周波数の振動計測装置では、計測の周期が0.05秒なので、この固有周期の構造物の振動は捉えられそうですが、構造物が1周期の振動をする際の計測が1回なので振動の波形は捉えることができません。1周期の振動を4~5点で計測できれば波形として捉えられることから、計測のサンプリング周期は0.01秒、周波数でいえば100Hzの計測が必要となります。

なお、木造や中低層の建物の固有周期は0.2~1秒といわれており、100Hzのサンプリング周波数で十分なデータが得られます。

MicroSDカード

MicroSDカードは、スマートフォンやデジタルカメラなどの記憶媒体として活用されています。名称のSDは、Super DensityではなくSecure Digitalだそうです。カード型の記憶メディアは、PCカード、コンパクトフラッシュ、スマートメディア、メモリースティックなど多くの種類が存在しましたが、現在ではSDカードが主流となっています。この歴史についても、Wikipediaに詳しく記載されています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/SD%E3%83%A1%E3%83%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89#SD.E3.83.A1.E3.83.A2.E3.83.AA.E3.83.BC.E3.82.AB.E3.83.BC.E3.83.89

SDカードは他に比べ低いライセンス料で生産が可能だったために多くの分野で用いられ、結果として他を排除して主流となったとする説があります。機能の高さはともかく、オープンな思想がディファクトスタンダードに導く、という教訓でしょうか。

Geo-Stickには、microSDカードのスロットが搭載されています。振動計測後に加速度データはまずmicroSDカードに書き込まれ、パソコンに接続されていれば続いてデータを転送します。もし、何らかの理由でパソコンへのデータ転送ができなくても、microSDカードにはデータが保管されています。microSDHCにも対応しており、最大32GBまでの記録が可能です。容量が8GBのカードを使った場合には、加速度のデータが400KBとすれば2万回の地震時データを保管できる勘定です。

USB

Geo-StickはパソコンにUSBで接続されます。USBはUniversal Serial Busの略です。普段何気なく使っているUSBという用語ですが、長い歴史と様々な仕様の変遷があります。秋の夜長にWikipediaをゆっくり読んでみるのも一興です。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%90%E3%82%B9

データを伝送する際、USBのようなシリアル方式では1本の信号線を使いデータを1bitずつ直列に送ります。他方、パラレル方式は、複数の信号線を使ってデータを横一列に並べて送ります。SCSIと呼ばれたインターフェースなどがこの方式です。伝送クロックが同じならば、伝送速度はパラレルのほうが当然高速なのですが、近年の超高クロック化の結果、仕組みの簡素なシリアルの安定度が高く結果的に高速伝送が可能となり、現在ではシリアル伝送方式であるUSBが主流となっています。シンプル・イズ・ザ・ベストでしょうか。

Geo-StickのUSBドライバはWindowsでインストールができます。また、パソコンとのUSB接続のおかげで、電源が供給できる、複数台接続できるなどのメリットが享受できます。最近では、USB/TCP変換器によって、LANを経由してあたかもUSBが延長されたかのように接続できる仕組みもあります。

MEMS加速度センサー

Geo-Stickでは、MEMS加速度センサーを用いて加速度を計測しながら記録しています。MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systems の略称で、直訳すると「微小電気機械システム」となります。中でもMEMS加速度センサーはゲーム機やスマートフォン、エアバッグなどで多用されており、現代では欠かすことができないセンサーとなっています。MEMSに関しては、東京大学の年吉先生のWebページにわかりやすい解説があります。また、MEMS加速度センサーの仕組みについてはWikipediaの総合的な解説があります。是非一度ご覧ください。

http://toshi.iis.u-tokyo.ac.jp/toshilab/?What%20is%20MEMS%3F%2FIntroduction

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A0%E9%80%9F%E5%BA%A6%E8%A8%88

Geo-Stickに搭載されているMEMS加速度センサーは静電容量型で、周辺回路との組み合わせで±2Gから±16Gの範囲を16bitの分解能で計測します。理論的には、±2G の計測範囲で0.0006Gの分解能を持つのですが、ノイズを考慮すれば0.001~0.003G程度の分解能と考えています。地震時の振動計測ではこの分解能で十分です。詳しくはこちらをご覧ください。